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ハマでは新機軸のジュリアン

「舞いジェネ!」レビュー ~夢アドブレイク前夜~

突然ですが。「舞いジェネ」が凄まじいです。

 
どのくらい凄まじいのか。
 
結論から言うと、夢みるアドレセンス、間違いなく今年の最重要アイドルの1つと断言出来るくらいです。凄まじいんです。
 
 
 
 
「舞いジェネ!」は、そんな夢アドが本気で天下を取りに来た、そんな曲だと思うんですね。
 
 

 

というのも
ニッポン放送吉田尚記アナウンサーの指摘していた「三方向からのレコメンド」話と、夢アドのプロデューサーのインタビューが点と線でつながった(あくまで僕のなかで)ので、それを無理やり押し付けるブログにします。
 
 
そもそも夢アドって、今までのアイドル界でも特殊な立ち位置だったと思うんですね。

例えば、去年出したシングル「サマーヌード・アドレセンス」は、元の「サマーヌード」のアンサーっていうのもありましたけど、基本は「サマーヌード」の主人公より「完全に優位に立ってるちょっと大人な女の子」目線でアレンジもMVもかなり大胆に仕上げてます。去年の@JAM EXPOでやってましたけどはっきり言って客は完全に静まり返ってました。でも評判が悪い、ってことはないです。かわいかった。

つまり、ああいうアイドルフェスに進んでいくような層、全力で乗っていく層とはちょっと違う独自の路線、という事ですよ。
 
——グループアイドルのブランディングとして「クラスにいそうな子」というものがありますが、夢アドの立ち位置はその真逆とも言えます。

伊藤:例えば、中学の頃、同級生の女子で、すこし話しかけにくいタイプの、クラスの男子ではなく隣の高校の先輩と仲がいいような女子っていましたよね。大体3限終わりに制服を着崩して教室に入ってくる、みたいな。すごく話しかけにくいんだけど案外頑張って話して見ると、意外と優しくてめちゃくちゃイイヤツっていう(笑)。そういう女の子のポジションが、いまのアイドルシーンの中にあったらおもしろいなと。僕自身、そういう子と話せなかった経験もあり(笑)。それを何かいい形にできないか、というイメージから、思春期を意味するアドレセンスを冠したグループ名にしたんです。

——男性なら、誰しもが身に覚えのありそうなエピソードですね(笑)。

伊藤:また一方で、「クラスにいそうな子」的なアイドルの売り方に逆張りする意識も持っていました。2012年に結成し、地道にインディーズ活動を続ける中で徐々にファンも増えていったんですが、特徴的なのがファン層のあり方なんです。

——他のアイドルグループとは異なるんですか?

伊藤:夢アドの無料ファンクラブ会員は、男性と女性の割合が6:4。まず女性の割合がとても多い。この女性ファンの多くが11、2歳の頃に『ピチレモン』読者で、夢アドメンバーからおしゃれの楽しさを学んだという方がすごく多い。イベントなどで他のアイドルグループと楽屋をご一緒すると、みたいな会話も巻き起こっているんですよ。
例えばAKBやアイドリングは、大島麻衣など一部を除いたメンバーのほとんどはキャリアが浅く、ほぼゼロからグループとして成長していくことを前提に活動を始めました。それは、現在のアイドルシーンの、いわばテンプレートみたいになってます。
 
もちろん夢アドもこのテンプレに則って結成してますが、狙ってやったのかは微妙です。確かに歌と踊りのレベルはまだ低かったけど、見せ方がわかってるのでアートワークとかのすごみでも全然戦えてたとおもうんです。夢アドって「成長途上さ」と「プロさ」を両立していた、わけわかんないアイドルなんですね。
 
いわゆる「女性アイドルグループ」にここまで女性人気がついてること、そしていまの夢アドのキャリアですでに「ずっとファンでした!」って声が上がるのは、他と比較してかなり異常といえるわけです。
 
 
で、ここから吉田さんに話を持っていきますと。

カルチャー情報サイト「yoppy」 » 独占連載:フジテレビコンテンツ事業局のプロの皆様を前に、吉田が語る「現代オタクの作法とタブー」⑤ アイドリング!!!の話



一番初めに誰かから情報を聴いたときって、それだけで自分の価値観が変わることってあんまり無いんですよ。「なんか、ももいろクローバーZがいいらしいよ?」「あ、そうなんだ」みたいな。1回目だと、ほぉ、そうなんだなんですよ。でも、あれ?って価値観が変わるのは、たぶん、別の関係ない方角から誰かが同じ情報を思った瞬間にかなり変わるんですよ。変わりやすい人だとここで変わる。一番目だけで変わる人はそんなにいない。二番目で変わる人は結構いる。もっと言うと、もう1ヶ所別の所から更に聴くと、かなり決定的に価値観は変わる。
 
なので、今物事を広げていくためには、3ヶ所位から同時に火がつかないとブレイクしない。これってみんなも無意識のうちに、自分たちの中で精査してるはずなんですよ。誰かだけがいいと言っているものは、ポジショントークに過ぎない。たぶん、ここしばらく、僕らは「ポジショントーク」みたいなものに慣れてしまっているので、1回目は信じないけど、2回目、3回目の時に「本当だ」と思って動き始めるっていうのを無意識のうちにやっている。
 

 

吉田さんたちが現在試験運転してるサイト「yoppy」で連載している『現代オタクの作法とタブー』、これ相当面白い連載なんですけど、「三方向からのレコメンド」というのが一つのキーワードだと思うんですね。ただそれは、フジテレビコンテンツ事業部の方々の前で話してた中身なので、きっと番組づくりを担う側からのコメントだったと思うんですね(これはきっと吉田さんも同意してくれるはず)
 
三方向をそろえるのはかなり厳しい。たぶんPerfumeももクロは「サブカル」「ロックファン」辺りまでは余裕で囲い込めてたんですね。AKBはその分「一般層」を取り込めてる。
 
 
その流れで夢アドを見ると、「女性アイドルオタク」と「ファッションモデルの女性ファン」という、限りなく相性最悪・共存不可能な並びをそろえることに成功してる、珍しいグループである、といえるわけです。
 
そしてその象徴こそが「舞いジェネ!」になるんですね。あ~長かった。申し訳ないです。
 
 
 
 
 
 
 
 

 すごさその1「あちら側すぎる」

 
1つは、どう考えても「ドルヲタ」の方向を向いてなさすぎること。
 
「舞いジェネ!」のMV、クラブっぽく飾り付けた高校で踊るやつなんですが、この4分弱見事にスクールカースト上位しか映ってないですよ!ドルヲタとか1人もいないですよこれ。ここまで明確に「男友達、下手したら彼氏」の存在を隠すことなく表現するのってこれ、処女性をむやみにありがたがって騙される既存のアイドルシーンではあり得ないです。
 
AKBももクロがイケメンの同級生たちと歌って踊るところ、想像できますか?
ジャニオタさん的にいうと、Sexy Zone辺りが若い女の子と仲良く踊る・・・たぶんMVに移り込んだ段階でたたき割りそうですよね(偏見)
 
要するにこれまでのアイドルシーンの定石として、吉田さんの言葉を借りるなら「仮想の彼女」あるいは「仮想の娘」として自分とアイドルの親密な関係性を構築させて、搾取、という流れがあった。だから、自分の存在がアイドルの真横に「投影」できる、その余白が必要だったわけです。
 
そこで一番やってはいけないことは「自分以外の男(女)の存在」がもう居ることを示す事なんです。特に自分より明らかに優れた奴を見せてはいけない。なぜなら恋人ごっこがその場でゲームセットするから。
 
そして、ああいうリア充の巣窟からはじき出された、なじめなかった「クソみたいな現実」に生きる(or生きた)連中が、「現実の代替品」を求めてるからこそ「恋人ごっこ・娘の父親ごっこ」を欲するわけで。「舞いジェネ!」のMVはそのドルオタに非常な現実を全力で投げつけてるんです。これがおかしい。
 
 
・・・多分この後の片付け、夢アドメンバー含めこのクラスの連中誰もせず帰ると思うんすよ、で僕みたいな蚊帳の外にいた生徒会執行部が後処理させられる(という私怨)
 
「何それー☆」「知らなーいキャハハ」みたいはセリフに、本気で背筋凍る元スクールカースト最下層はぼくだけじゃない(私怨)
 
 
 
だけど、それでいいんです。なぜか。圧倒的にかわいくて楽しいから。むしろ優等生演じるほうが不自然でしょ。ほんとに男遊びしてたら自覚なさすぎだけど、ってレベルで。
 
「アイドルオタク」からさらに広い一般層に受けるには、モー娘。やAKB並みの露出、Perfumeやベビメタ並のクオリティ、ももクロやでんぱ組などの圧倒的な個性を武器に戦うしかなかったし、そこには必ずオタ向けだけでなく一般層向けに「丸める」必要があったんです。それは狙う層の趣向が違うから。
 
「かわいいだけじゃダメですか」っていうフレーズでいうと、オタク目線からは「カワイイは正義」なんですよ。でもファッション好きの女性の立場を想像すると、「カワイイ」だけじゃなく中身の充実感も必要なんじゃないかって。このMVで拾えている部分でいうとそれは、「楽しいことできる仲間」ってことで。クラスメイト達と踊るあのシーンには、そういう必然があったんですよ。
 
夢アドは、男女両方、スクールカースト上部にも下部にも受ける要素を既に持っている。
 

すごさその2 かっこいい音楽

もともと夢アドの曲はスタイリッシュなギターサウンド中心でした。
 そして、1stデビュー作は、この流れを踏襲した曲調になります。


夢みるアドレセンス「Bye Bye My Days」 MV 

 

今、ベビメタやでんぱ組のように生バンドを入れるアイドルが増えてきてる感じで、それは少なからず「ロックフェス対応型」という側面でしょう。テクノやっても他の人いるし、音圧的にもバンド・クラブ勢に負けないようにってことですが、夢アドのギターロックって別の文脈だと思ってて。

 

青春の疾走感を出したいという思いの曲は、実はかつてのAKBにルーツがあると思っています。簡単にいえば「言い訳Maybe」や「大声ダイヤモンド」。


【MV】 大声ダイヤモンド / AKB48 [公式] 
 
個人的には、[Alexandros]っぽいなってずっと思ってました。AKBとの共通点としては、青春っぽさに加えて、立ち位置的な意味でも「王道」だからかも。 


[Alexandros] - ワタリドリ (MV) 
 
それと、「流行りへのカウンター」という言い方があるとすれば、

・ブラックミュージック/ソウルが根強いハロプロ

・↑より速さとキラキラ感を重視したAKB

―――アイドル戦国時代―――

・↑より刺激的になるためにとがりまくったももクロ

・↑さらに本格的にクラスタを取り込んだベビメタ

 

 というようにこれまでは逆張りで目立つことが出来た。一方で、勝ち上がるルート=アイドル現場で受ける、というのが現状で。となるとやはりMIXが打ちやすかったり暴れやすいところに人気が集中してしまう。 で、それってじつは夢アドにはかなり分が悪いんじゃないかと。

 

 最初は乗りやすさ=速さだというありがちな思い込みがあったと思うんですが。簡単に言いますと、ギターロックと打ち込みのテクノポップ、どっちがそこそこでかい会場の音響で流した時印象に残るか、体が動いちゃうか、って話になるんです。相当気を付けないと、薄く聞こえちゃうか、逆に曲強すぎてボーカルが消えちゃったり負けちゃう。みんな騙されてるけど、オタのノリやすさは「速さ」でなく実は「太さ」なんですでもこれは、AKBを除く、Perfume以降に勝ち上がったのアイドル全てクリアしてきた問題でもあります。

 

 速さでいうと、でんぱ組やエビ中あたりがBPM180~200前後の曲を出してることから、夢アド的にも「曲の速さアド」はもうないわけですね。  

 

 

 

じゃあどうしたか。ここで「サマーヌード・アドレセンス」が出てくるわけです。あるいは僕のアイドル楽曲大賞2015一位「くらっちゅサマー」。

 

 

 

 つまり一曲ごとの密度・濃さを高めることに注力したんですね。その結果が、作詞作曲及び演奏にOKAMOTO'S、編曲にagehasprings玉井健二さんを迎えて、ノリだけでない本当に「踊れる」曲をぶち込んだわけです。

薮下:ただ、次も広義な意味でダンスミュージックが大きなテーマにはなっていくでしょう。それはジャンルに固執するわけでは決してなく、例えばそれが所謂ロックだったとしても、もはや「ダンス」は絶対に欠かせない要素であるということです。ロキノン系のバンドで言えば、KANA-BOONとかKEYTALKでも4つ打ちのダンス・チューンはセット・リストから決して外せないものですよね。そういった意味でも、ダンスミュージックとしての要素を取り入れることで、アイドルソングでもポップスとしての汎用性を持ち得ると思うんですよ。
伊藤:夢アドのファンの子ってとてもいい子が多いんです。クラブで朝まで遊ぶみたいなことにはまだ少し抵抗があるけど、踊ってみたい。そんな子たちが踊れる楽曲をつくっていきたいです。

KANA-BOONはどうしても「フェス至上主義」という「ノリノリになったもん勝ち」の文脈で仮想敵になりがちですが、OKAMOTO'Sというある意味温故知新の塊みたいなバンドが手掛けた楽曲の話の中で、こういう形で出てきたのもちょっと面白いなあと。

 

 追記 玉井健二さんといえば、僕の中ではBase Ball Bearの曲を多くプロデュースする「偉人」なんですけど。アイドルソングだけでなく、ロックバンドの味を活かしながら歌の良さを引き出すすごい人だし、ロック好きのひともある意味すんなり受け入れてくれるんじゃないかと。

 

 

 

まとめ

冒頭で「舞いジェネ!」のMVが、アイドルシーンの定番から思いっきり脱線したもの、という事を書きました。
 
でもそれは、disどころか夢アドが「アイドルオタク」「ファッション好き女子」「音楽・フェス好き」という3方向から支えられるグループになりえる、という事です。

 

 

この歌詞がいろいろ表してると思います。

心配しないでパパ スキャンダルには充分気を付けるわ

これを全力で深読みすると、「もう架空の彼女としてのアイドルの時代は終わった、一緒に踊りましょ!」ってことです。
 
 つまり
・既存のアイドルの扱い方である「仮想恋愛」から、いろんな感情を内包した、みんなにとっての「仮想の青春時代」 の象徴こそが夢みるアドレセンスであるという事。
 
・「彼氏彼女の関係」「親子の関係」というどうしても1対1の関係性から、アイドルとファンが一体となって参加するインタラクティブな関係「理想の学校・クラスメイト」への移行=ゲームチェンジ。
 
 
同級生と一緒にワイワイやる感じ。これこそが「夢アドの時代」なわけです。
 
 
 
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この戦略は正しい。昔はマスに向けて大々的に告知してようやくそれなりに成功する大変な作業が、今は狭い範囲のクラスタだけでももう十分商業的には成功できるんです。
 
でも、僕はどっかで誰もが認めるスーパースターを欲しがってるんです。もしかしたら夢アドは、国民的アーティストの不在が叫ばれる現在の音楽シーンにおいて、一箇所じゃないかもだけど、本当の意味で「クラス全員が踊れるアイドル」になり得る存在じゃないかなって。
 
 
 
そう思いながら6000字近く書きました。次はもうちょっとすっきりまとめます。