「舞いジェネ!」レビュー ~夢アドブレイク前夜~
突然ですが。「舞いジェネ」が凄まじいです。
というのも
例えば、去年出したシングル「サマーヌード・アドレセンス」は、元の「サマーヌード」のアンサーっていうのもありましたけど、基本は「サマーヌード」の主人公より「完全に優位に立ってるちょっと大人な女の子」目線でアレンジもMVもかなり大胆に仕上げてます。去年の@JAM EXPOでやってましたけどはっきり言って客は完全に静まり返ってました。でも評判が悪い、ってことはないです。かわいかった。
つまり、ああいうアイドルフェスに進んでいくような層、全力で乗っていく層とはちょっと違う独自の路線、という事ですよ。
——グループアイドルのブランディングとして「クラスにいそうな子」というものがありますが、夢アドの立ち位置はその真逆とも言えます。
伊藤:例えば、中学の頃、同級生の女子で、すこし話しかけにくいタイプの、クラスの男子ではなく隣の高校の先輩と仲がいいような女子っていましたよね。大体3限終わりに制服を着崩して教室に入ってくる、みたいな。すごく話しかけにくいんだけど案外頑張って話して見ると、意外と優しくてめちゃくちゃイイヤツっていう(笑)。そういう女の子のポジションが、いまのアイドルシーンの中にあったらおもしろいなと。僕自身、そういう子と話せなかった経験もあり(笑)。それを何かいい形にできないか、というイメージから、思春期を意味するアドレセンスを冠したグループ名にしたんです。
——男性なら、誰しもが身に覚えのありそうなエピソードですね(笑)。
伊藤:また一方で、「クラスにいそうな子」的なアイドルの売り方に逆張りする意識も持っていました。2012年に結成し、地道にインディーズ活動を続ける中で徐々にファンも増えていったんですが、特徴的なのがファン層のあり方なんです。
——他のアイドルグループとは異なるんですか?
伊藤:夢アドの無料ファンクラブ会員は、男性と女性の割合が6:4。まず女性の割合がとても多い。この女性ファンの多くが11、2歳の頃に『ピチレモン』読者で、夢アドメンバーからおしゃれの楽しさを学んだという方がすごく多い。イベントなどで他のアイドルグループと楽屋をご一緒すると、みたいな会話も巻き起こっているんですよ。
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一番初めに誰かから情報を聴いたときって、それだけで自分の価値観が変わることってあんまり無いんですよ。「なんか、ももいろクローバーZがいいらしいよ?」「あ、そうなんだ」みたいな。1回目だと、ほぉ、そうなんだなんですよ。でも、あれ?って価値観が変わるのは、たぶん、別の関係ない方角から誰かが同じ情報を思った瞬間にかなり変わるんですよ。変わりやすい人だとここで変わる。一番目だけで変わる人はそんなにいない。二番目で変わる人は結構いる。もっと言うと、もう1ヶ所別の所から更に聴くと、かなり決定的に価値観は変わる。
なので、今物事を広げていくためには、3ヶ所位から同時に火がつかないとブレイクしない。これってみんなも無意識のうちに、自分たちの中で精査してるはずなんですよ。誰かだけがいいと言っているものは、ポジショントークに過ぎない。たぶん、ここしばらく、僕らは「ポジショントーク」みたいなものに慣れてしまっているので、1回目は信じないけど、2回目、3回目の時に「本当だ」と思って動き始めるっていうのを無意識のうちにやっている。
すごさその1「あちら側すぎる」
すごさその2 かっこいい音楽
今、ベビメタやでんぱ組のように生バンドを入れるアイドルが増えてきてる感じで、それは少なからず「ロックフェス対応型」という側面でしょう。テクノやっても他の人いるし、音圧的にもバンド・クラブ勢に負けないようにってことですが、夢アドのギターロックって別の文脈だと思ってて。
青春の疾走感を出したいという思いの曲は、実はかつてのAKBにルーツがあると思っています。簡単にいえば「言い訳Maybe」や「大声ダイヤモンド」。
【MV】 大声ダイヤモンド / AKB48 [公式]
個人的には、[Alexandros]っぽいなってずっと思ってました。AKBとの共通点としては、青春っぽさに加えて、立ち位置的な意味でも「王道」だからかも。
[Alexandros] - ワタリドリ (MV)
それと、「流行りへのカウンター」という言い方があるとすれば、
・ブラックミュージック/ソウルが根強いハロプロ
・↑より速さとキラキラ感を重視したAKB
―――アイドル戦国時代―――
・↑より刺激的になるためにとがりまくったももクロ
・↑さらに本格的にクラスタを取り込んだベビメタ
というようにこれまでは逆張りで目立つことが出来た。一方で、勝ち上がるルート=アイドル現場で受ける、というのが現状で。となるとやはりMIXが打ちやすかったり暴れやすいところに人気が集中してしまう。 で、それってじつは夢アドにはかなり分が悪いんじゃないかと。
最初は乗りやすさ=速さだというありがちな思い込みがあったと思うんですが。簡単に言いますと、ギターロックと打ち込みのテクノポップ、どっちがそこそこでかい会場の音響で流した時印象に残るか、体が動いちゃうか、って話になるんです。相当気を付けないと、薄く聞こえちゃうか、逆に曲強すぎてボーカルが消えちゃったり負けちゃう。みんな騙されてるけど、オタのノリやすさは「速さ」でなく実は「太さ」なんです。でもこれは、AKBを除く、Perfume以降に勝ち上がったのアイドル全てクリアしてきた問題でもあります。
速さでいうと、でんぱ組やエビ中あたりがBPM180~200前後の曲を出してることから、夢アド的にも「曲の速さアド」はもうないわけですね。
じゃあどうしたか。ここで「サマーヌード・アドレセンス」が出てくるわけです。あるいは僕のアイドル楽曲大賞2015一位「くらっちゅサマー」。
つまり一曲ごとの密度・濃さを高めることに注力したんですね。その結果が、作詞作曲及び演奏にOKAMOTO'S、編曲にagehaspringsの玉井健二さんを迎えて、ノリだけでない本当に「踊れる」曲をぶち込んだわけです。
薮下:ただ、次も広義な意味でダンスミュージックが大きなテーマにはなっていくでしょう。それはジャンルに固執するわけでは決してなく、例えばそれが所謂ロックだったとしても、もはや「ダンス」は絶対に欠かせない要素であるということです。ロキノン系のバンドで言えば、KANA-BOONとかKEYTALKでも4つ打ちのダンス・チューンはセット・リストから決して外せないものですよね。そういった意味でも、ダンスミュージックとしての要素を取り入れることで、アイドルソングでもポップスとしての汎用性を持ち得ると思うんですよ。
伊藤:夢アドのファンの子ってとてもいい子が多いんです。クラブで朝まで遊ぶみたいなことにはまだ少し抵抗があるけど、踊ってみたい。そんな子たちが踊れる楽曲をつくっていきたいです。
KANA-BOONはどうしても「フェス至上主義」という「ノリノリになったもん勝ち」の文脈で仮想敵になりがちですが、OKAMOTO'Sというある意味温故知新の塊みたいなバンドが手掛けた楽曲の話の中で、こういう形で出てきたのもちょっと面白いなあと。
追記 玉井健二さんといえば、僕の中ではBase Ball Bearの曲を多くプロデュースする「偉人」なんですけど。アイドルソングだけでなく、ロックバンドの味を活かしながら歌の良さを引き出すすごい人だし、ロック好きのひともある意味すんなり受け入れてくれるんじゃないかと。
まとめ
この歌詞がいろいろ表してると思います。
心配しないでパパ スキャンダルには充分気を付けるわ